CIVIC ECONOMY LAB

私たちが小さな経済を生み出す方法

田村篤史さん(京都移住計画) × 江口晋太朗さん シビックエコノミー・ケーススタディ
2016年4月16日(土)に『日本のシビックエコノミー~私たちが小さな経済を生み出す方法』(フィルムアート社)の刊行を記念して、Impact Hub Kyoto(京都市上京区)でトークイベントを開催いたしました。今回は、京都移住計画田村篤史さんと本書の編著者の江口晋太朗さんのトークをレポートいたします。(文中に挿入されている画像は当日使用したスライド画像です)
【『日本のシビックエコノミー』刊行記念トークイベントのプログラム】
①「シビックエコノミーとはなにか」 スピーカー:紫牟田伸子さん
ケーススタディ 田村篤史さん(京都移住計画) × 江口晋太朗さん
③ケーススタディ 石橋秀彦さん( 豊劇新生プロジェクト) × 紫牟田伸子さん
④ゲストクロストーク 田村篤史さん × 石橋秀彦さん (進行:江口晋太朗さん)

 

田村:僕は東京で4年ほどサラリーマンをして、2012年に京都に戻ってきました。東日本大震災をきっかけに「京都へ戻りたいな」と思ったときに、みんなはどうなのかと聞いてみたら、みんな「いつかは地元に帰りたい」と言う。でも、直観的にその「いつか」は来ないなと思ったんです。

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東京には人・物・金・情報が全部集まっていて、何かするんだったら東京に行ったほうがいいのかなとか、成功するためには東京で一旗揚げる、みたいな強い引力が働いている。その力を断ち切って地元に戻るのは大変な力が必要なのだろうなと。

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まず東京にいると、京都の観光情報しか入ってこない。それで、京都の仕事、場所、人の情報があればハードルが下がるのではないかと「移住計画」を始めました。

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1人で情報を集めるのは大変ですが、みんなの力でちょっとずつ集めてきたら早いと思って、Facebookで小さなグループをつくって、みんなで情報をシェアしました。今はウェブサイトもあるし、Facebookがもうすぐ1万「いいね!」になります(6月3日達成済み)。

「移住計画」では、「居・職・住」の3つをテーマに活動しています

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「居」は居場所づくりや仲間探しのための交流の場の提供で、京都で25~26回、東京でもやりました。

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2つ目が「職」=仕事の情報です。京都の場合は中小・零細の会社が多いので、転職サイトにも載っていない。そういう情報をきちんと伝えていく。寺社仏閣などのお守りをつくっている会社や、錫を取り扱っている創業140年の会社、Pepperの一部をつくっている会社などもあります。

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「坂ノ途中」という有機野菜や環境負荷の低い野菜を流通させる仕組みをつくっている会社からは求人掲載の費用の一部を現物(野菜)でいただきました。

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「住」については不動産業の経験があるメンバーが、WEBサイトをつくっておりまして、ここで物件の周りの景色や暮らしが垣間見られる文章で紹介しています。

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また「町家に住みたい」「空き家を改修しながら住みたい」人のためのプロジェクトもあります。[東京など他の地域で培ったスキル]×[地域の資源]が「移住計画」の特徴かなと思っています。

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不動産担当(岸本)が会場にいるので、彼女に少しだけ今やっている活動を紹介してもらいます。

岸本:今、宇治の町家と建具工場の建物に小商い三組を集り、地域の寄り合い所を併設する場へとリノベーションしています(参考URL http://kyoto-iju.com/column/nakaujiyorin)。まちが衰退していくことに危機感を覚えた地元の方が、私にディレクションの依頼をしてくださり、一緒に取り組んでいます。

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江口:建物のストーリーやまちのストーリー込みで物件を紹介する。自分たちの暮らし方、生き方を自分たちでつくる移住計画の趣旨とマッチする不動産紹介ですね。

田村:ほかに、2014年から京都府さんとの連携で、京都府13市区町村への移住・定住を促進する公共事業で、「今まで知らなかった京都で暮らす」をコンセプトにした移住促進の動画や冊子をつくっています。旅行会社とタイアップしたお散歩ツアーと移住者の家を訪ね歩く企画や、大学との協業で移住者/学生向け就職説明会の開催もしています。

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移住計画も今は15地域に増えて「みんなの移住計画」という形で発信しています。それぞれ活動を参考にし合うことでよりボトムアップされていくような、ゆるいつながりで運営できているかなと思っています。移住計画のミッションとして、最初は「地元に帰りやすい社会へ」を謳っていたのですけれども、全国への広がりの中で、今は「生きたい場所で生きる人」の旗印になれたらいいなと思ってやっています。

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東京でも「東京からできること会議」を始めています。「いつかは地元に戻りたい」と思っている人たちが、「地域資源」に「自分資源」を掛け合わせて、その人が生きたい生き方を一緒につくっていけたらいいなと。それがちょっと具現化できたのが、東京で3日間開催した「Discover Another Kyoto」というイベントです。『シビックエコノミー』に出てきてもおかしくない京都の素敵な人たちをゲストに呼んで、東京の人たちと一緒にワークショップしながら話し合う機会をつくりました。

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もう一つ、地方出身者が京都で学び地元へ帰るときに何か還元していく動きがつくれたらいいなと思っています。京都市の学生14万人のうち3分の2は地方出身者で、その人たちが大手の就職サイトを見て東京や大阪に行ってしまうという課題があります。そこで、そうではない選択肢もあることを知った上で最終的に選択してほしいという思いがあって、「ローカルナイト」というイベントを始めました。

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学生から35歳ぐらいまでを対象に、地域の未来をつくっている実践者とまず出会ってもらう。そうすると、自分の地元がピンチであること、その一方で、面白い大人が地元に帰って面白いことをやっている事実が見える。この2つを知って自分の地元や地域の可能性を再発見する機会をつくっています。各地の移住計画のプレーヤーを呼んできたり、面白い公務員に来てもらったりしながらやっています。これまでに信州、大分、熊本などとやってきました。そこから、大阪から長野に帰る特急列車を貸し切って大学生がみんなで帰省するイベント(実際は貸し切れなかったのですが)も生まれています。

シビックエコノミーとは何か、僕もよくわからないままここに座っていますけれども、さっきオープンスピーチでお話しされていた「関係性の回復」という言葉が結構しっくり来て、人とか物とか事とかが新しい形でつながり直すことなのかなと思って聞いておりました。

江口:移住計画の茶論(サロン)の話があまりでませんでしたが、京都に戻ったら、実はIターンやUターンの人が多いことに気づいたのですね。

田村:その人たちが京都を面白くしているという事実に帰ってから気づきました。

江口:面白いことをやっているけれど地域で孤立している。そこをつなぎ直そうとしたところ、移住を促進して終わるのではなく、移住後の交流の場をつくっているところに面白さがあると思うのです。僕は、シビックエコノミーを考える時に、結局人と人との関係の中でいろいろなものが発生していく最初のきっかけが茶論(サロン)なのかなと強く思っていまして。

田村:この茶論(サロン)は移住検討中の方と移住済みの方が集う場としてやってきましたが、最近はずっと京都に住んでいる人や京都の中で地域活性の試みをしている人も参加してくれるようになりました。僕らだけでは限界があるところへ、地元の面白い人たちや京都市の職員が来てくれたりする中で広がりが出てきました。

江口:ただ移住を促進して「おいでよ」と言っているのではなく、何かをデザインしているんだと思います。自分の技術を発揮したい人と京都の面白い会社のマッチングは経済活動も生んでいるけれど、お金を払えないから野菜で交換、これも一つのエコノミーじゃないですか。だから、金銭的な価値ではない新しい循環、物々交換やスキル交換や人との関係性をつくる方法をうまくつくっていると感じます。単純にお金もうけをしようという発想からはなかなか出づらい光景ですね。求人ページにも結構力を入れているし。

田村:多分読むのがしんどくなるぐらい記事は長いです。応募がなくても、京都の会社の考え方がずっと残っていってほしいなと思っていて。通常の求人広告は公開期間が決まっているのですが、うちは基本的にずっと載せてオーケーなんです。過去の記事を、継ぎ足していくような形で記事づくりをすることで、30年、40年アーカイヴされてくると、社史のようなものになっていきますよね。当時の創業者の思いが読めるような。そういうサイトになったら面白いなと思っています。採用の応募が全然ない企業さんからも追加のオーダーをいただいたことがありました。応募自体は別のルートを経由して来るんだけども、応募してきた人は「移住計画」の記事をちゃんと読んでいるんだそうです。

江口:めぐりめぐっていろいろな形での利益をつくり上げていくというのは、まさにエコノミーそのものですよね。

(了)

田村篤史

(たむら・あつし)1984年 京都生まれ。立命館大学在学中、APUへ交換留学、NPO出資のカフェ経営に携わる。その後休学しPRや企画を行うベンチャーにて経験を積み、卒業後は海外放浪の末、東京の人材系企業に就職。会社員の傍らシェアハウス運営なども行う。2012年4月に退職。京都へUターンし「京都移住計画」という移住促進のプロジェクトを中心に、町家活用や商店街活性といった地域に関わる仕事や、大学と連携したキャリアデザインやPBLなどの授業も行う。「人と人、人と場のつながりを紡ぐ」をミッションに、2015年3月に株式会社ツナグムを起業。

江口晋太朗

(えぐち・しんたろう)1984年生。福岡県出身。編集者、ジャーナリスト。TOKYObeta Ltd.代表取締役。メディア、ジャーナリズム、情報社会の未来、ソーシャルイノベーション、参加型市民社会などをテーマに企画プロデュース、リサーチ、執筆活動などを行う。「マチノコト」共同編集、NPO法人マチノコト理事、アートプロジェクトを推進するNPO法人インビジブル理事、インディーズ作家支援のNPO法人日本独立作家同盟理事などを務める。Open Knowledge Japan、Code for Japan のメンバー。著書に『ICT ことば辞典』(三省堂)、『パブリックシフト:ネット選挙から始まる「私たち」の政治』(ミニッツブック)ほか。